突然の熟年離婚を言い渡されないための配慮とは・2
■妻が離婚を決意するまでのプロセス
前回は、定年を迎えた夫が、妻から突然熟年離婚を突きつけられるまでの行程についてお話をした。これ、同年代の方々からするならば、オカルト映画なんかよりもよっぽど恐ろしい展開ではなかっただろうか。
今回は、このような悲劇を招かないための対策を考えていこうと思う。実は熟年離婚はしっかりと対策さえとっておけば、ある程度は回避できるものである。そしてこれには、夫の立場、妻の立場を、客観的に捉えていく必要があるといえそうだ。
さて、まずは夫側の考えを見ていこう。夫は生涯にわたり外で働く。まあ、俺のようにぷらぷらと生きる人間もいるが、これは例外に属する。外で働き家族を養う。だから家に帰ればゆっくりとしたいというのが一般的な夫の思いであるはずだ。
しかし定年退職してからは、妻とのんびりと生きたいと考えてもいる。ふたりであちこち旅をしたいとも考えているはずである。「妻にもいろいろと苦労をかけたので、これからは楽をさせてあげたい」と、優しい夫ならそう考えているはずである。
これはこれで素晴らしいことだ。しかしこの考えだけでは、実はちょっと配慮が足りない。
妻はできれば、仕事から疲れて帰った夫のために、料理を振る舞おうと考えていてくれるはずである。しかし、仕事から帰った夫がいつも不機嫌で、家では何もやらないとなると、しかもそんな状態が何十年も続くとなると、嫌になるのも当然といえば当然である。
■妻に離婚を決意させないための夫の対策
よって定年以前から、夫にはある程度の妻に対する配慮が必要となる。ただしこれは、妻にとってのガス抜き程度のケアであったとしても、かなり高い効果があるものである。
たとえば、夕食の片づけをちょっと手伝うとか、週末の掃除を少し行うとか、料理ができるのであれば、朝食を作り、妻をゲストとして扱うとかだ。妻は24時間、同じ作業を繰り返し行う必要があるわけだから、たまにそれを夫が手伝い、その作業から離れることができると、それだけでガス抜きになる。
また、たとえば子供の教育についても、なるべく妻と協力をすることが必要だ。
夫の中には「家のことはすべて妻に任せてある」と言い切ってしまう方もいらっしゃるようだが、これは大きな間違いといえる。なぜなら、家のことだからこそ、夫婦で協力して解決していかなければならないからだ。
「しかし男は外で働いているではないか」
とそんな意見も聞こえてきそうだ。確かに男は外で働かなければならない。だから、家のことのすべてをやる必要はない。ただ、妻の考えを聞いたり、重要なことについては、ともに考えたり、妻に指示をしたり助言をする必要がある。
また、何かあった際に「家のことはすべてお前に任せているのに、なんだこれは」という言葉は絶対に言ってはならない。妻からすれば、夫の単なる責任逃れにしか聞こえない。家の主人は夫である。そして、家のトラブルは主人に責任があるからだ。
夫は、リーダー学をしっかりと学んでおく必要がある。
■定年後の夫の注意点
さて、次に定年後の注意点についてふれておこう。これは先人の声でもある。
定年を迎える以前は、夫は外で働き妻は家を守るという構図でも、なんとかバランスがとれていた。しかし、定年以降は、夫も妻も家にいる。年金暮らしであるわけだ。ちなみに年金は、夫が働いたことによって得られるお金のように思われがちだが、夫のものではなく、夫婦のものである。これは法律でもしっかりと定められている。
よってふたりのお金で、ふたりが生活をする状況となる。つまりまったくのイーブンな状態だといえる。しかしここで多くの方は間違いを犯してしまう。まったくのイーブンな状態にあるにもかかわらず、料理や掃除、雑務に至るまで妻に任せようとしてしまうのだ。
「俺はこれまで必死に働いてきたのだから、いいではないか」
それは妻も同じである。しかもイーブンな状態になったことについて、妻は完璧に認識している。にもかかわらず、夫がこれまでと同様に雑務などを押しつけてくると、ここに大きなストレスが発生することになる。女性は不公平なことには、とても敏感なのだ。おわかりだろうか。
ここから熟年離婚のリスクが増大することになる。なぜか?
まず、妻からすれば、すでに子供は成人をしていることから、子育てをする必要はない。しかも、年金の半分は自分のものである。仮に離婚をすれば、夫の面倒を見る必要はなくなる。つまり、フルタイム自分の為のみに生きることができるのである。
これまであれこれと夫の世話をしてきた妻からすれば、これほど素晴らしい誘惑はない。
■夫が定年を機に見直すべきこととは
さて、妻をこのような決断を下さないために、夫は定年を機に、自らの生活を大きく見直す必要がある。できれば定年以前から、そのための準備をしておくことが重要である。
つまり、家のことを妻と分担をして行う配慮である。すでに子供は手を離れているはずだから、たとえ定年前であったとしても、自由になる時間は比較的お持ちの事だろう。その時間の一部を使って、家の事を行うわけだ。家事と一口にいっても、やってみるとそれなりのスキルが必要であることに気づくはずだ。だから、定年以前から、料理を作ったり掃除をしたりという作業は、徐々に始めておくことが望ましい。料理や洗濯、掃除などさまざまな業務があるが、これを妻と分担して行うようにする。
すると、夫が家にいても、さほど妻の負担にはならない。また、分担性にすれば、妻が友人と遊びに出かける余裕さえできるはずである。さらには、ディナーを作り、妻をゲストとして迎えれば、ちょっとした二人のパーティになるはずである。当然のこと、後片づけの皿洗いまで完璧にこなしてこそ、妻をゲストとして扱うことになる。中途半端はいけない。
このような配慮をしておくと、「ふたりで旅行でも行かないか」という夫からの誘いに、妻は喜んで乗ることになる。楽しめるからだ。また、ふたりの生活をとても大切に思ってくれるはずである。夫の配慮に感謝し、そしてともに生きることに、充実感を見いだしてもくれることだろう。そう。熟年離婚を考えようとは思わなくなるわけである。
さて、いかがだったろうか。夫からすれば、少々大変なこともあろうかと思う。しかし、ふたりで第二の人生を幸せに歩みたいと思われるのなら、是非とも早めに準備に入ることをお勧めしたい。できれば、55歳くらいからはね。って、俺の年齢である。
あれこれと偉そうなことを述べていないで、俺も早速始めることにしよう。そう。熟年離婚の恐怖は、決して他人事ではない考えているからだ。
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