高級マンションの価格上昇が続かない本当の理由
■マンション業界に発生している二極化とは
中古マンションの下落幅が拡大し、100万円台、つまりファミリーカー並の価格で購入できるようになっってきている。またその一方で、7000万円以上の高級マンションが一部で売れ出しているという。大手ゼネコンも今後高級マンションの販売に着手するとの情報が飛び交うなど、マンション業界にも二極化の波が及んでいるようである。
ではこの二極化、なぜ発生しているのだろうか。また、今後のマンションやその価格は、どのような動きを見せるのだろうか。
俺は専門家ではないので、偉そうなことは言えないが、市場原理に基づけば、最低限ある程度の予想は立てることができる。
そもそも中古マンションの下落は、今さら古くなった団地を買ってまで住みたくはないという端的な思いが、需要不足の大きな要因の一つであろうかと思う。また、マンションは、その劣化とともに、大規模修繕や立て替えの必要性が生じる。これらの面倒な問題を引きずる物件を、あえて買おうと考える人は、あまり多くないことだろう。
需要の減少は人口の推移を見てもある程度の予想を立てることができる。今後の日本は少子化を原因として、徐々に人口が減少傾向をたどる。つまり人が少なくなるわけだから、よほど利便性の高いエリアでもない限り、住宅事情に困ることはなくなるはずである。よってこの市場は買い手市場となるはずである。
買い手市場の場合のアドバンテージは、当然買い手にあるわけだから、価格もまた下落傾向をたどる。つまりマンション投資のうまみは、今後あまりないことになる。
■高級マンションは投資先として有望か否か
さて、ではなぜ、一部の高級マンションの売上が好調なのだろうか。「中古マンションが下落傾向にあるわけだから、高級マンション需要だって下がっておかしくないんじゃないの?」と思われるかもしれない。しかし実は、高級マンションには、今、ちょっとした特別な需要が生まれていたりするのだ。
この需要拡大の大きな要因のひとつに、株価の上昇を挙げることができる。ここの所、日本は量的金融緩和政策を進めていることもあり、株価は実体経済を無視して上昇傾向に転じている。まあ、この傾向がいつまで続くかはわからないが、それでも株価が上昇しているわけだから、株主にとってはうれしい限りだろう。
長期的な株価投資の場合、通常は買いから入る。信用売りによる長期投資もつなげばできないことはないが、通常は株式を買い、じっくりと育てていく投資法が一般的である。
よって株式投資をされてきた方からすれば、その多くは株価上昇の恩恵を受けることになる。そしてここで得た資金の一部が、高級マンションに流れているわけだ。
ところが、量的金融緩和政策は、さまざまな副作用を生み出すリスクもある。たとえば、ハイパーインフレやスタグフレーション、さらには経済の不安定化などを挙げることができる。
もし、現在の政策の影響により、日本市場の真の需要が拡大するのであれば、実体経済も良い方向へと向かうだろう。高級マンションの需要は今後も続くはずである。しかし株価は上昇し続けることはない。また、様々な懸念要素が現実となってしまった場合、株価は一気に暴落する可能性すらある。
すると、好調だった高級マンション需要もまた、一気に冷え込む可能性が高い。また、需要が冷え込めば価格も自ずと暴落する。
「しかし、高級マンションなのだから、買えなくなったとしても住みたい人間はいるだろうから、持っていて損はないのではないか?」
と、そんな声も聞こえてきそうだ。
しかし株価が下落傾向に転じた場合、実質所得が向上していない日本において、誰がそこに住めるというのだろう。購入者はその物件を人に貸す場合、利回り計算をして家賃をはじき出すはずである。つまり投資に見合う家賃設定をする必要がある。ところがそんな高い家賃を出してまで借りようとする人間はまずいない。また、十分に家賃を支払える人間は、そもそも新しい物件を購入するはずである。さらには、経済の動向に関係なく日本の人口の減少は続く。
つまり、実質的な需要がそこにはないのだ。すると、中国の公共投資事業やシャドウバンキングがらみの高級マンション事業と同様の事態がすぐにでも発生することだろう。
だから、株式投資で儲かったからと、安易に高級マンション投資はすべきではない。まあ、これは俺の独り言なわけだが、儲けたからと安易な再投資に走るのは、高いリスクを伴うことを、あらかじめ肝に銘じておく必要はありそうである。