50代からの貧乏ながら気楽な人生

ミドルの視点から見たさまざまな問題やネタを綴ります。

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裁量労働制の闇


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■裁量労働制はサラリーマンの敵か味方か

サラリーマンの就労環境が悪化しようとしている。この傾向を垣間見ることができる側面は多々あるのだが、その一つに裁量労働制を挙げることができる。企業はこの制度を拡大したいと考えており、それは政治の動きにも見え隠れする。

ちなみに裁量労働制とは、みなし労働時間制のひとつであり、雇用者と労働者がこの労働形態を結んだ場合、労働者は実際の労働時間とは関係なく、労使であらかじめ定められた時間を働いたものと見なされる制度だ。

裁量労働制は、現行法においては、労働基準法第38条の3及び第38条の4の条件を満たす必要があるとされている。つまり、業務の性質上、業務遂行手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある職種であることが、現在においては条件となっているわけだ。しかし今後は、この条件がさらに緩和されていくことになるかもしれない。そしてこの緩和には大きな闇が存在する。

「労働時間に関係なく働いたことと見なされるのなら、仕事ができる人間にはいい制度なんじゃないの?」

と、このように思われている方もいらっしゃることだろう。確かに裁量労働制では、労働時間は関係がなくなるわけだから、生産性の高い労働者には有利に働く制度のように思える。人の半分の時間で作業を上げることができる労働者がこの制度を用いれば、毎日半日働けばそれで事が足りるようになるはずである。しかしそれでいて給与は満額支給されるのであれば、仕事ができる労働者にとってはこれほど魅力的な働き方はない。・・・はずである。

ところがこの制度を導入している企業で働く労働者の多くは、むしろ不満を持っているという。これはなぜだろうか。

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■なぜか逆に機能する裁量労働制

先にも申し上げたとおり、裁量労働制とはみなし労働時間制のひとつであるわけだから、そこにはみなし労働時間の設定がなされる。つまり実質的な労働時間にかかわらず、あらかじめみなし労働時間分は働いたものと見なされて給与が支払われるわけである。

たとえば、みなし労働時間が法定労働時間の8時間に設定されている場合、実質1日4時間しか労働をしていなかったとしても8時間は働いたことになる一方で、8時間を超えた部分においては、時間外労働手当が支払われることになるはずである。

「それっていいんじゃね?」

確かに。ところがみなし労働時間を逆に解釈し、これを利用する企業も少なくない。12時間働いたとしても、8時間労働として見なすという企業も登場してきているようだ。また、労働時間については、労使協定にゆだねられている。さて、これがどのような意味を持つことかおわかりになるだろうか。

仮に1日の労働者平均労働時間が12時間である企業が、みなし労働時間を1日8時間に設定したとする。すると本来であれば、8時間を超えた残業代はこれまで通り支払われるはずである。ところが、企業によっては12時間働いたとしても、8時間分の賃金しか支払わないケースも多くなることが予想される。規定があやふやなためだ。

ただしそれでも、裁量労働制は業務の性質上、業務遂行手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある職種であるわけだから、問題はあまり生じないはずだ。ところが、みなし労働時間を労使協定にゆだねる部分に変更を施すことなく、裁量労働制をより幅広い労働者に適用しようとする動きだけが進む可能性もある。

「もともと残業なんかするつもりはないし、1日4時間で帰ることができるように仕事をするさ」
「裁量労働制になれば朝もゆっくり出社できそうだしいいかも」

という強者や自由人が賛同しそうである。ところがこれもダメである。企業側からは「あらかじめ決められた就労時間は会社に居てもらう必要がある」といった通知がなされたり、暗黙のプレッシャーがかかることになり、結果として、たとえば1日12時間は仕事に縛られる可能性が高い。また、実際に裁量労働制を採用している企業の労働者の多くは、このような労働環境を強いられているという。

■働き方の実現

さて、このような大きな穴のあいた法律が、労働者のために規定されたものと思われるだろうか。これについては法律や政治に詳しい方に答えを委ねるが、明らかに資本家側からの提案であり、労働賃金を合法的に削減しようとする動きにしか見えない。

首相官邸ホームページを観ると「働き方の実現」というページの中に以下のような一文を確認することができる。

「働く人の視点に立って、労働制度の抜本的改革を行い、企業文化や風土も含めて変えようとするもの。働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする」

であるならば、法改正はまったく難しくない。

「裁量労働制は、みなし労働時間を法定の8時間と定め、それを超える労働時間には、法定残業時間が支払われるものとする。なお、1日あたりの就労時間管理は労働者に委ねるものとする」

これであれば生産性の高い労働者は、随分と楽になるのではないか。まあ、施行される確率は限りなくゼロに近いけどね。

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■働き方改革法案から裁量労働制について全面削除

・・・と、つらつらと書いていて、タイミングよく裁量労働制に関するニュースが飛び込んできた。総理の会見において、「今回提出する働き方改革法案の中において、裁量労働制については全面削除するように指示した」ということだった。

全面削除の経緯までは知ることができなかったが、胸をなでおろしたサラリーマンは多いのではないだろうか。また、これにより内閣支持率の急落も避けられたはずである。実は働き方改革法案にはまだ問題も残るのだが、とりあえずは良かった。

働き方改革法案に、なぜ裁量労働制が盛り込まれたのかについては、よく把握していない。しかしできれば政府は、多くのサラリーマンの実際の意見にしっかりと耳を傾けていただければと思う。また、データを提示しては自らの利権獲得に動く識者ばかりに意見を求めることがないように、慎重にリサーチをしていただきたいと切に願う今日この頃である。

 


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