増加傾向にある中年フリーターが今後進むべき道とは
■増加傾向にある中年フリーターの実態
最近、中年フリーターが増えているのだそうだ。いうなれば、俺もこのカテゴリーに属するはずだから、仲間が増えるという点においては、ちょっとうれしい気もするが、一方で同様の苦労を強いられている方が増加傾向にあるわけだから、喜んでばかりもいられないというのが本音である。
実際、中年フリーターは、過酷な日々を強いられる場合が多い。年収は100万円程度の場合が少なくないはずである。一人で生きるのであれば、支出を調整すればこれでも生きていくことはできるので、逆に気楽な人生ということになるが、多くの方は家族をもたれているだろうし、そもそも中年ということは、子供がちょうどお金のかかる時期でもある。よって家族への負担も増大することだろう。
また、過酷な日々は中年フリーターの職場環境においても展開されるはずである。上司の多くは自分より年齢が下の若者であるはずだが、その若者からあれこれと指示されて、末端の業務をこなさなければならないのだから、これだけを取ってみても精神的苦痛は少なくないことが予想される。
さらには、アルバイトの場合、社会保険などの対応がなされていない環境も多い。短期間の雇用を理由に、雇用保険や厚生年金、健康保険などへの加入がなされないので、国民年金や国民健康保険は自分で手続きをして納付しなければならないし、雇用保険がないので、失業給付を受けながら仕事を探す機会もない。
つまり、家庭内での居心地が悪くなり、そして職場環境でも多くのストレスをかかえ、そしてさらに低収入の過酷な労働を、ずっと続けていく必要があるわけである。しかしこれでは、夢も希望もない。まさに至れり尽くせり、いやいや、踏んだり蹴ったりの状況が続くわけである。
■中年フリーターが増加傾向にある理由
では、中年フリーターは、昨今なぜ増加傾向にあるのだろうか。
中年フリーターの数が増加傾向を始めるのは、バブル経済崩壊の直後からと推察される。それ以前は、一般に非正規雇用のシステムは一部に限定されていたので、転職をするにしても、仕事があれば、それは正社員雇用であったはずである。だから、一家の大黒柱たる男は、転職をしたとしても、フリーターになることはなかった。
当時とて非正規雇用はあった。しかしこれは、主婦が家計を助けるために、自分の働ける範囲内での仕事を選択するパートの仕事が主であり、これを一家の大黒柱がチョイスするというケースは、限りなく少なかったはずである。
ところが現在では、中年の転職は極めて難しい。まあ、雇用する側からすれば、わざわざ中年を雇わなくても、若い人間を雇用し、しっかりと育てるほうが、人件費も安く済むしそもそも企業のコアの部分を担う人材を育てやすい。よって新卒採用が中心となり、よほどのスキルを持った人間でなければ、とりたてて中年を雇用する必要はないわけだ。
また、一方で非正規労働が増え続けていることから、正社員になろうと考えても、それがかなわない中年は、自ずと非正規労働へと落ちていくことになる。
これは、パチンコ台において、打ち上げられた玉が多くの針にはじかれ、その間を抜けながら下降するのに同様である。運よくチューリップなどに拾われればそれはそれだが、そこに入らない場合、底辺の穴へと落ちるしかなくなる。仮に底辺にも大きなチューリップ、つまり何らかの救済措置があれば、多くの人は救われるだろうが、現在、そんな気の利いたセイフティネットは存在しない。
よって、何らかの要因において、正社員からはじき出された人間は、非正規雇用、もしくはフリーターとして生きるしかなくなるわけである。
■中年フリーターに必要な今後のビジョン
さて、では中年フリーターとなってしまった人々は、今後どのような展開を図ったらよいのだろうか。これについては、個人の思惑もあるだろうから、ご自分の行きたい方向を定め、それに向けて少しずつでも歩まれていくのが望ましい。
たとえば、正社員復帰をされたいのであれば、フリーターを続けながらも求職活動を根気良く続ける必要があるだろう。ちなみに40代くらいまでなら、必死に探せば必ず雇用の機会はあるはずである。
また、フリーターを続けながらも、何らかの仕事を作り上げるという手もある。小さなビジネスながら徐々に育て上げることのできる何かを継続していくという手だ。当初はアルバイトに加え、その作業もこなさなければならないうえに、ビジネスからの収益は望めないので大変だろうが、徐々にでも収益が上がれば、数年のスパンで生活は楽になっていくかもしれない。
一方、収入が少ないわけだから、日々の固定費や生活費を最小限にまで落とす必要はあろうかと思う。
「使いたくてもお金がないので、落とさざるを得ないだろう」
と、そんな突っ込みも入りそうだが、使いたくても使えないというのではなく、使わずに済ませることができる生活を再構築するという点において、若干ニュアンスが異なる。
年収1000万円以上の人でも借金を抱えている人は少なくない。その一方で年収300万円でもしっかりとお金を残す人はいる。
ちなみに、独身であるなら、環境さえ整備すれば、年収100万円程度でも生活をしていくことはできる。フリーターとして残りの人生をエンジョイするというのも、選択肢のひとつとしては存在するわけだ。
人生は山あり谷ありであり、これは避けることができない。しかし、苦境に陥ったからと、そのまま生涯を送るのではあまりに勿体無いことだと思う。人生は自分の意思により、どの様にでも変えることができるはずだ。そして、変えることができるか否かは、自分がどの方向へと歩むかのしっかりとした意思や、日々の歩みにかかっている。つまり、どのような立ち位置に置かれたとしても、そこから歩みだすことは、誰にも可能なことなのだ。