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[第2話]労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律


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■26業務の期間制限を3年とする改正

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律についての第2話である。いよいよ問題の核心部分の説明となる。

まずは本法における「労働者派遣の位置づけの明確化」である。この中で「厚生労働大臣は労働者派遣法の運用に当たり、派遣就業が臨時的・一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」とある。つまり派遣は臨時的であり一時的な労働であると言い切っている。

「派遣なんかで、ずっと働いてちゃダメじゃん」と言っているわけだ。ところが現状最も重要となる「じゃあ、どうすればいいのさ」に対する法的な措置は講じられていない。

いや、むしろ派遣労働者にとって、かなり過酷な改定がなされている。

本改正法においての「より分かりやすい派遣期間規制への見直し」において、「現行制度では、専門業務等のいわゆる「26業務」には期間制限がかからず、その他の業務には最長3年の期間制限がかかるが、分かりやすい制度とするため、これを廃止し、新たに以下の制度を設ける」とある。

また、この詳細として「事業所単位の期間制限 : 派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を上限とする。それを超えて受け入れるためには、過半数労働組合等からの意見聴取が必要。意見があった場合には対応方針等の説明義務を課す」「 個人単位の期間制限 : 派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年を上限とする」とある。

少々わかりにくいので補足していこう。

まず「26業務」という言葉だが、これは派遣法施行令第4条で定められた、専門的知識や技術を要する業務、もしくは特別の雇用管理を必要とする業務であり、ソフトウェア開発、機械設計、放送機器等操作、放送番組等演出、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、建築物清掃、建築設備運転・点検・整備、案内受付・駐車場管理等、研究開発、事業の実施体制等の企画・立案、書籍等の制作・編集、広告デザイン、インテリアコーディネーター、アナウンサー、OAインストラクター、テレマーケティングの営業、セールスエンジニア・金融商品の営業、放送番組等における大道具・小道具の26業務をいう。

これまでの法律においては、これら26業務に派遣受け入れ制限がなく、同じ業務に3年を超える場合は、その労働者に対して直接雇用を申し込む義務が発生していた。
ところが、「これではわかりにくいので、今後は全業務についても、3年の制限を設けることにしたよ」という改正がなされたわけだ。つまり派遣労働者は職種に関係なく、3年までね。ということになったわけだ。

ただしこれには、例外がある。

無期雇用派遣労働者、60歳以上高齢者、日数限定業務、有期プロジェクト業務、休業代替業務などについては、期間制限の対象外となるとされている。つまり、ソフトウェア開発に代表されるプロジェクト単位での派遣労働や、定年を過ぎて働く派遣労働者、さらには既に無期雇用として働いている派遣労働者は助かるが、それ以外の職種すべてについて、3年の制限が課されることになる。

なお、期間については、同一企業であっても部署を変更すれば3年単位での雇い入れが可能とされている。ところがこれにも無理がある。

これまで広告のデザインを担当していた派遣社員に3年の期限が到来する。すると雇い入れ企業の担当者から、こんな感じで提案がなされる。

「ウチとしては優秀な人材である君に辞めてもらいたくはないんだが、法律だからね。でも、実はウチの地方の工場にライン生産現場の仕事があるんだけど行く?また3年働けるけど」

行けるだろうか?行けるはずがない。

なお、この部分の改正目的が、「より分かりやすい派遣期間規制への見直し」であるのなら、「現行制度では、専門業務等のいわゆる「26業務」には期間制限がかからず、その他の業務には最長3年の期間制限がかかるが、分かりやすい制度とするため、全業務においての期間制限を撤廃する」としてもいいんじゃネ?と思えたりもする。

期間を設けたがために、そこからあぶれる人間が増加していくのにもかかわらず、法的な救済措置が講じられないのなら、むしろこの改定の方がスッキリ行くように思うのは、俺だけだろうか。

ドイツの失敗を取り上げた学者の意見そのままに、日本の現状やセイフティネットの脆弱性を考慮せずに安易に成立させた改正だとしか思えてならない。

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■派遣労働者の均衡待遇の強化の意味とは

さて、いよいよ説明も終盤に差し掛かる。

「あれ?正社員にも影響が及ぶって前回言ってたけど、結局ないじゃん」

その話はこれからである。

本改正法の概案として、「派遣労働者の均衡待遇の強化」というものがある。「派遣元と派遣先双方において、派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇確保のための措置を強化する」というものだ。

実質的には、「派遣の受け入れ先企業は、派遣会社の求めに応じて、正社員の賃金水準に関する情報を派遣会社に提供するように努めなさい」といった通達がなされることだろう。

でもまあ「努める」とは、努めればよいわけだから、大したことではないし、書類によるやりとりで済むだろうから、何とでも書くことができる。

「なぁんだ。やっぱり正社員は関係ないじゃん。まあ、均衡待遇の強化によって、派遣労働者の賃金が上がるのはムカつくけど」

どこに派遣労働者の賃金を上げろと書いてあるのだろうか。ここには「派遣労働者の均衡待遇の強化」とは書いてあるが、給与を上げろとは一言も明記されていない。

もし俺がブラック会社の経営者なら、派遣労働を主に必要とする業務部分を単独部署とする。また、給与体系についてもその部署については、現行の派遣労働者と均衡する給与水準を給与規定に明記することだろう。

「これは改正法によるものなので、私としては苦渋の決断なんだよ」とブラック経営者の俺はそう言う。そして、その部署に対して、窓際の不要な社員を随時転属させる。

「法律だからね。仕方ないんだよ。ごめんね」

あとは出社しなくなるのを待てばよい。派遣社員の補充ならいくらでもできるし、そこに混ざった社員が消えようが残ろうが、それで派遣社員との均衡が図れたわけなので大義名分が立つ。しかも多大なコスト負担にはならない。
「均衡待遇の強化」とうたわれただけであり、何ら義務付けがなされていないのに、わざわざ派遣社員の給与を上げる企業はない。均衡を図るのであれば、むしろ不要となった社員の給与を下げたほうが、会社には有益なのだ。

また、この効果は、全体の給与体系にも影響を及ぼす可能性が高い。当然、下落方向への影響である。昨今、部分的に人材不足状態が発生しているので、そんな業種であれば、給与は上昇傾向をたどることだろう。しかし、それ以外の非採算部門、非生産部門の正社員は気を付けたほうが良い。ある時、派遣労働者がスタッフとして加わり始めたら、それは、均衡待遇に向けた会社の動きなのかもしれないからである。

・・・つづく

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