夢を追いかける
「夢アレルギー」という言葉があるんだそうだ。たとえば「さとり世代」においては、あれこれと夢を語られるのに違和感を覚えるようだ。現実を直視して生きていくことに必死で、「今さら夢なんか語られてもね」と、そんな感覚なのだろう。まあこの感覚、底辺にへばりついて生きていると、わからないでもない。確かに夢は、願うばかりではかなわないことの方が多いからだ。
■底辺にへばりついている理由
俺が底辺にへばりついて生きているのには、それなりの理由がある。その最たるものが、実は夢を追いかけ続けてきたことにある。ただし「夢」という言葉、60手前のおっさんが使ってみても、「何を今更」と突っ込まれてしまうことだろう。
これはどちらかというと悪い習慣であり、底辺にへばりつく要因でもあるわけだが、何かやりたいことができると、とかく突っ走ってしまう傾向にある。そんな際に、周囲の人間に良く言われることがある。
「そんなこと、できるわけないだろう」
とまあ、みんな口を揃えていうわけだ。まあ、周囲の人間は俺の馬鹿さ、頭の空っぽさを知り抜いている。よって、客観的な目で見た正しい助言であるわけで、助言に悪意はないことも、それが正しいこともよくわかっている。
ところが馬鹿な俺は、周囲の助言を無視して走り始める。多くの場合は、その助言通りにうまくいかないで終わるが、いろいろなことが起こるのが人生だ。中には、周囲の予想に反して、小さな夢をつかむこともある。面白いのは、その際の周囲の反応である。周囲は何と言うと思われるだろうか。これ、とても意外なんだが、周囲は口を揃えて次の言葉をいう。
「お前だからできたんだよ」
これはどういう意味だろうか。
人はおおよそ新たな行動を起こすことには消極的である。「できるわけない」と考えてしまう傾向にあるようだ。しかし、目の前に実例が提示されたとしても、自己の「できるわけがない」という意見を崩すことはないという点は気にかかる。実例を示したとしても「お前だから」という特例条件を設け、基本線は譲らないのだ。これは、ちょっともったいないようにも思う。
■夢を追いかけることの豊かさ
「夢を追いかけるだけじゃあ、生活ができないだろう」と、そんな声も聞こえてきそうである。そう、確かに不埒に夢なんか追いかけているので、いまだ底辺をはっているわけである。ただ、夢を追いかけるのは過去の話ではなく、現在進行形だ。しかも複数の夢がある。また、過去の複数の失敗を後悔したこともない。
ちなみに、まっとうな道を選択せずに、夢を追うと、多くの場合生涯年収は下がるものだ。たとえば、一流大学を出て大手企業に入社、努力をして実績を上げれば、生涯年収は3億円に手が届くかもしれない。ところが、そんな道を捨て、不確実性の高い夢を追いかけた場合、夢をつかめないことの方が多く、生涯年収は1億円程度に下がってしまう可能性が高い。その差2億円である。いかがだろうか。多大なる損失だと思われるだろうか。
しかし実はこれ、考え方によっては、後者はとても豊かな人生を送っているととらえることもできる。つまり夢を追いかけた人間は、2億円ものお金を投資をした人生を送っている。数千万円出せばまともな家が買える現在において、2億円を使って自由なことをしているわけだ。こんなリッチな人生の遊び、滅多にできるものではない。
■第一歩を踏み出す前に不可欠となる決意
このように書くと、中には「俺も夢を追いかけようか」と思う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、夢を追うには、ある種の決心が不可欠となる。そしてこの決心がないと、夢を追いかける一歩を踏み出してはならないと思う。
というのも、夢はなかなか具現化しない。具現化しないと多くの人は腐る。腐った際に思うのは「こんな道を歩まなければよかった」という後悔である。また、周囲の声も厳しい。「だからいっただろう。そんなこと、できるはずないんだよ」とまあ、そんな声が浴びせられるわけだ。さて、そんな際にあなたはどう対応するだろうか。後悔はしないだろうか。
後悔をしないことに確信が持てないのであれば、むしろ夢は夢として胸のうちに秘めて、まっとうな道を歩むのが良いような気がする。2億円もかかるのだ。この点については、頭の片隅にとどめておいていただきたく思ったりもする。
■夢を追いかけることの意味
夢とは、つかむことだけが目的ではない。夢に向けて歩んでいるその時間を楽しむこともまた、実に意味があることだと思う。だから、夢を追いかけることに後悔は無用である。人生に何らかの希望を持ち、地道に努力を重ねることは、決して無駄な事ではない。決心さえしっかりと持つことができたなら、それが常識から外れた道であり、これまで誰もが歩むことがなかった道であったとしても、歩むことにはきっと意味がある。
死を目前にした人の多くは、皆こんな後悔を口にするんだそうだ。
「自分がしたいと思ったことを、もっとしておくべきだった」
さて、あなたはどんな夢を追いかけるのだろうか。