55歳最低男が夢を語るとどうなるか
■まだ本気出してないだけ
「まだ本気出してないだけ」という漫画をご存知だろうか。40歳にして漫画家を目指して突然会社を辞めてしまう男のその後のストーリーだ。この作品、映画化もされていることからご存知の方も多いかと思う。ちなみに映画の主演は堤真一さんだ。
この映画の中で、若者が描く将来像の40代に、主人公が既に到達してしまっている自分に気づくシーンがある。
「そうかあ。俺って今、バリバリ将来中じゃん」と、そんな台詞があったかと記憶している。大いに笑わせてもらったコメディだが、この映画には深い哀愁もただよう。
でもまあ、この映画では「40こいて何やってんだよ」的な視点も含まれているわけだが、私からすると、40歳などほんの若者であり「どうぞ何でもトライしてみてね。まあ、ちょっとは苦労するかもしれないけどね」と、暖かく送り出して差し上げたい年齢である。
■「将来」がすでに過去の男の語るべき夢
55歳の私は、若者が描く「将来」の時期が既に過去にすっとんでしまっている。つまり、若者が思い描く将来は、既に遠い過去を辿らなければ記憶を呼び起こすことができない。こう考えると、ずいぶんとしをとったものである。しかしあえて55歳の男が夢を語るとどうなるんだろうと、ちょっと考えてみた。
たとえば「私は将来金持ちになって豊かに生活するぜい」と飲み屋で近くにいた30代のサラリーマン相手に胸をはったとする。もし、その相手がちょっとできる人間であれば、私は多分こんなツッコミを即座にうけるはずである。
「そんな壮大な夢を持ったあなたは、今まで何をやって生きてきたんすか?」
また、普通の男であったとしても、
「あなたの将来って、いったい何歳のことです?」と突っ込まれるのは見えている。
「うっ」
私はそういって次の言葉を失うに違いない。そうである。だから、この手の夢は55歳では飲み屋で語ってはいけない。せめて心にとめておくだけの方がいい。
まあ、私は実際にはそんな夢は持っていないので語ることもないが、このように55歳にもなると、現状がすなわち若者の将来に相当するわけだ。だから、現在が負け組底辺層であるなら、これまでの人生も大したことはないとの推測は容易にできるわけである。
よって、飲み屋で語る夢は「老後は、妻と日本全国の温泉を巡りたいと考えています」程度がよろしいようである。
さて、では実際に私の現在の夢は何かと考えてみた。そして、最初に浮かんだ言葉とは、悲しいことに「プー太郎」だった。しかしプー太郎なら今やってるじゃん。ということで、私の夢は既に成就していた。と、こんなことを書きながら、今日も太陽が西の空に沈みかけるわけです。
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